貧田は谷岡研究所のやっかいになりながらぐうたらしていた。


そんな貧田をなぜか路理衛は「アニキ」と慕うようになっていた。

「アニキはなんで3Dマンになったんで?」
「何でなんでは学問の時に言う言葉。
人の一生にゃ意味も理屈もありゃしねえってな~」
「アニキ、ヒーローの心得ってものを教えてくんねえか。
あっしもアンドロイドのはしくれ。
8マンかキャシャーン、
せめてジェットジャガーぐらいにゃなりてえんだ。
・・ジェットジャガーはちと落ちるな」

  
「タマキンのぉ。おまえそんなにヒーローになりたいか。
だったら海岸でいじめられてるマイルドセブンを助けるこったな」
「マイルドセブン????」
考え込む路理衛であった。

「あーれー」
絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
「おおっ。出やがったかな。あっちか。路理衛、来い!」

現場に駆けつける二人。


少女(当時16歳)が怪人に襲われていた。

「あ あっ。おめえ!!」驚く路理衛。

二人を見て、性感マッサージ師はすかさず逃げてしまった。


少女を助け起こしながら、貧田が路理衛に教えた。
「あいつが例のマッサージ師だぞ」
「なんだって!?アニキ、あっしは奴を知ってます。奴は木星3号っていうバイオアンドロイドでやす。
木星3号の居場所も知ってやすぜ」

「よおし。奴のアジトに乗り込むか」
「あっしが案内しやす」
「いくぞー、そりゃーっ」
二人は少女を放り出して走っていった。


「あたしはどうなんのよォ。・・・バカ」



二人はまず成田空港に向かった。
道中、路理衛が説明する。
「実はあの谷岡博士には双子の兄弟がいるんですが、
どうも兄弟仲が悪くて十年ぐらい前に谷岡の家をおん出て
阿久田と名のるようになったんでやす」
「阿久田ねえ」
「本名は谷岡意寛ヶ走(たにおかいかんがはしる)ってんですが、
今は阿久田意寛(あくだいかん)といってます。
で、その阿久田と谷岡のおやっさんが別れる前に
腕比べで人造人間を作ったんですが、
その時阿久田が作ったのが、あのバイオアンドロイド
木星3号ってわけでやす」
「で、谷岡さんはタマキンの路理衛を作ったっつーことか」

二人は飛 行機に乗り、

世界を巡り、


再び日本に戻って、行った先は高尾山。

路理衛の説明は続く。
「なんでも阿久田は人間の性衝動を研究してるって話ですぜ」
「阿久田意寛が性欲抜き取りの黒幕か」

いつも腹ぺこの貧田には山歩きは辛い。
「谷岡兄弟はなんで山奥にばっかり住むんだ?」
「なんでも、親が山師だったとか」
「へへへーだ」

路理衛が 山の上を指さした。
「あれが阿久田研究所でやす」


西洋の城を模した建物である。
貧田はつぶやいた。
「ふうむ。休憩8000円てところか」


「久しぶりだな、路理衛」
阿久田は機嫌よく二人を迎えた。


木星3号のことで詰め寄っても、
奴は3~4年前に逃げ出してしまったという。
しらを切るなといきり立つ路理衛を押さえて、貧田は
「阿久田さん、いまは何の研究をしてらっしゃるんですか」
と聞いてみたが、
「話すようなことは何も」とつれない。
しかし、「木星3号って何ですか?」と水を向けると
それぐらいならしゃべっても構わないと思ったらしい。
「木星3号とは生体アンドロイドだ。来る宇宙時代に備えてわしが開発した」
と、なんとか話し始めた。
「つまり、宇宙飛行士として?」
貧田の質問に意寛は口が回りだした。


「違う。宇宙飛行士慰安用だ。
外惑星への旅は長く、辛い。
コールドスリープの安全性も定かではない。


「そこで長い旅を快適に暮らすためにわしが考えたのが、バイオダッチワイフだ。


「そして、木星探査用が、あの木星3号だ。
完全肉質、人毛100%、体温は36度5分。
学習能力があり、常に新しい体位を用いる」

どうだ、と言わんばかりの阿久田の表情であったが、

あまりの馬鹿馬鹿しさに二人は笑い転げてしまった。
それを見て、すっかりご立腹の阿久田は二人を追い出してしまった。