山を下りる二人。

「アニキは本当に阿久田がなにも知らないと思ってるんですかい」
「事件の黒幕は阿久田に決まってるさ」
「そ、そうでやしょ。もう一度乗り込みやしょう。
奴を締め上げて白状させるんでやす」
「ま、乗り込むというより忍び込んで探りを入れるってとこかな」
「あっしも行きやす」
「だめだめ。おまえは谷岡さんに報告しに行け」
「しかし、一人で大丈夫ですかい」
「心配ご無用、ゴム製品!!だっはははは」

「ううむ。大物は違うぜえ」


貧田が再び阿久田研究所に忍び込んでみると、


木星3号が叱責されているところだった。
「おまえが路理衛の前へのこのこ飛び出していったりするから、
わしのことがばれてしまったではないか。
もうぐずぐずしてはおれん。
最後の千人切り作戦を実行しなければならん。
木星3号!今回の失敗の罰は、便所掃除一週間だ」
「いかせます~う」
そこへ、高らかな笑い声が聞こえてきた。

「むっ。誰だ!?」

物陰から 伸びる影。
「だれだ、だれだ、だれだー。
山のあなたの空遠く、さーいーわーいー住むと人の言う。
見たぞ、阿久田意寛」貧田が(よせばいいのに)飛び出してきた。


当然木星3号と格闘。

変身する余裕もなく

3Dメガネを落としてしまった。


谷岡研究所では


路理衛の報告を受けた谷岡には意寛の企みが見えてきていた。
「もし、奴が抜いた性欲を何らかの形で保存することに成功していたら。
そして、奴が精神エネルギーのひとつ、
性欲エネルギーに気づいていたら・・・」


「阿久田のやろう、その莫大なエネルギーで何をやらかそうってんでしょうね」
「もはやそんな推理は無駄じゃ。なにしろ、何でも出来るのだからな」

阿久田に捕らえられ、縛られた貧田。

「わしも悪人ではないのだよ」
「ならこのロープを解けっ」
「暴れないと約束してくれれば自由にしないこともないが」
「約束するからさー」
「その前にひとつ、わしの質問に答えてくれんかな」

3Dメガ ネを取り出す阿久田。

「これはいったいなんなのかね」
「ああ、それか。それがシビンに見えるか?
見ての通りのメガネだよ」
「ふむ。しかし左右の色が違っているのはどうしてだ?」
「俺の目は右と左じゃ、色ずれがあるんだよ!」
「あっそ。じゃ返してやろう」
あっさり3Dメガネを貧田の前に放り出した阿久田だったが、
やはりロープを解こうとはしなかった。


「早くロープを解けっ」と怒鳴る貧田に、
「まだ反抗的だな。・・まあ、わしの話を聞け」
と身の上話を始めた。
「わしがなぜ人々の性欲を集めているかわかるかね」

「あれはわしが学生の頃じゃった」
阿久田の回想が始まった。
「3年2組、谷岡意寛ヶ走入ります」

注・テニ スギャルソープ
「あら学生さん?
ここは時間制だから、何回でもいいのよ。
若いからすごいんでしょう」
「あ、いや、そうですか。がんばります」

ざざー


「なあに、もうだめ?
何にもしてないじゃない。時間制だからね。
しなくても払ってよ」


「3万円だった。早漏かつ回復能力が弱かったために、
何も出来ずに3万円だ。
そこでわしは、なんとかして絶倫になってやろうと考え、
性欲の研究を始めたのじゃ。
そして、人々の性欲を凝縮して強大なエネルギーを作りだし、
一人の人間に注入する技術を開発したのだ。
絶倫人となって再びあのトルコ(注)へ行くのだ。
3万円で30発だ。
これがわしのライフワークだッ」
注・脚本執筆当時、まだソープランドという名称はなかった


阿久田の考えに共感するフリをする貧田をみて、阿久田は喜び、
一杯やろうと酒を注ぎ始めた。
「おお、そのままでは飲めんだろう」
ついに阿久田はロープを解いた。


貧乏性の貧田は変身前に、ぐーっと一杯。

3Dメガ ネを手にしてほくそ笑む貧田。

それを見た阿久田はにこにこしながら、
「どうじゃ、うまい酒だろう。
金粉入りでな、一杯3000円ぐらいするんじゃ」
「ありゃりゃりゃ~~あ」
一杯の酒で、その月の限度額を超えてしまったのである。


「もー、やけだやけだ」
「よし、飲め飲め」
貧田と阿久田は楽しく酒を飲むのであった。